ふっとオベロンは意識を浮上させる。
本来サーヴァントに眠りは不要であるが、自分を打ち滅ぼした汎人類史に図らずも召喚されて以降、かつてのやる気がすっかり消えうせて、有事の際以降は惰眠を貪る癖がついてしまった。重たい頭を緩く振って、ぼうっと周囲を見渡す。相も変わらず殺風景な部屋は、寝る前と変わらず、マスター・藤丸立香の部屋だ。もう就寝前なのか、部屋全体がぼんやりと薄暗い。テーブルサイドのオレンジ色のランプだけが灯っている。
「起きたの?」
寝る前と違うことがあった。立香がベットの縁に座って、こちらを見ていた。身を捻るようにしてこちらを見ている彼女の手には端末が握られている。見慣れたそれには様々な明日の予定が表示されていた。周回、の文字が見えて、うげぇとオベロンは顔をしかめる。
「まーたそんな顔する。安心して、明日は試作のアーツパで編成してるから。オベロンはお休み」
やれやれと彼女が姿勢を戻して、手元の端末に視線を落とした。
(何だ。休みか――)
と内心で安堵していたオベロンはぎょっと目を見開いた。随分と今更だが、彼女の姿の異様さに気付く。
「何それ。きみ、そんな服持ってたっけ?」
ん?と立香がもう一度オベロンを見る。そして、ああと自分の服を眺め下ろした。普段はTシャツにハーフズボンという寝間着姿の彼女だが、今はかなり緩やかなシルエットのワンピースを着ていた。少し広めの襟ぐりには可愛らしい花のレースが縁取っており、彼女のサラサラとした髪が彼女の細い首と鎖骨にしな垂れている。一般的にネグリジェと呼ばれるものだと、聖杯のデータベースから読み解く。
「一昨日かな? アルトリアたちとパジャマパーティすることになってね。ミスクレーンが特急で仕上げてくれたんだよ」
アルトリアたちと色違いなんだぁとほけほけと笑うマスターにオベロンは、ふーん、ほーんと興味なさげに返す。その反応も予想通りと再び彼女はオベロンから視線を外した。
オベロンは、じっくりと彼女の背を見る。ぼんやりとした光が彼女の肢体をネグリジェの下からうっすらと浮かび上がらせていた。多分本人はきづいていないようだが、この服、かなり生地が透ける。なにせ、今夜の彼女の下着の色が白ということまで分かるほどだ。
ムクムクとオベロンの悪戯心が疼く。音もなく彼の右手を、ベットの上に座る(少しだけ荷重によって膨らんだ)彼女の臀部に近づけて、すりっと中指の背で撫でる。
「!」
ばっと立香がこちらを振り返った。当然ながら、手は彼女が振り返る前に引っ込めてある。
「なに?」
素知らぬ顔で嘯けば、立香の目が半開きになった。何を下らないことをしているのだと彼女の内心を見破る。なんのこと?と更に顔を作って見せる。無視することにしたらしい、ツンと彼女が顔を正面に戻す。暫く何もしないでごろごろとベットの上で寛いで見せる。すると、手元の端末に集中しだす気配がした。そろりと手を近づけて、今度は、彼女の尻の間(菊門)の下に悪戯をする。
「きゃあ!」
存外可愛らしい声がした。咄嗟に顔を反転させて彼女の視界から逃れる。オベロン!と彼女の大きな声が部屋に響く。
「なんだい、こんな夜更けに。そんな大声をだされちゃ、みんな起きてしまうよ」
「ふざけないでよ! 変態! えっち! 助平!!」
「きみ、きみ。そんなに顔を真っ赤にして、どこぞの山のお猿さんのようだよ。さて、困ったな。 何にそんなに怒っているのか、俺にはさっぱりだ。一体何がどうしたっていうんだい? すまないけど、何が起きたのか、須らくこの妖精王に教えてくれやしないかい」
劇のセリフのように返事をする男のなんと憎らしいことか。流石はプリテンダー。その顔も表情も完璧。ほとほとに困り果てた人物にしか見えない。ぐぬぬと立香はうめき声をあげる。もはや、明日の編成どころではない。つっかえながら彼女は訴えた。
「き、きみねぇ! さっき、……その、私のお尻に触ったでしょう!? し、しかも、あ、あんなところを」
「へえ。君のその可愛らしいお尻に! そいつは驚いた。…ところで、あんなところってどんなところだい?」
指さしてどこか教えてくれないか、と来たもんだ。立香は顔を真っ赤にして、近くにあった枕をオベロンに投げつけた。
「ばか! 信じらんない! 言えるわけないでしょう!? ――もういい。
もう変な悪戯やめて。いい? そのままそこで寝てて。分かった!?」
頭から湯気が出そうな勢いで捲し立てる彼女にオベロンは大きく肩を竦めて見せた。ぎろりと最後の一瞥を投げつけて、彼女は少し離れたところに座りなおす。もう一度、画面を見た。彼女は背を向けているが、こちらを警戒しているのがよく分かる。
内心の爆笑を必死に顔の下に押し込めながら、オベロンはその長い指先に魔力を込める。薄い緑の蝶が現れた。ゆっくりと翅を羽ばたかせる。ふわりと彼の指先から離れた蝶は、部屋の天井をキラキラと舞った。その蝶は、空中をひとしきり踊った後、マスターの顔の前に降りてくる。その翅の動きで空気が動いたのが分かったのか、下げていた視線を立香は上げる。
薄羽の色の蝶は明かりの絞られた部屋の中で、不思議と光を放っている。美しいその色に惹かれるように立香は端末に添えていた指先を蝶に向けて伸ばす。蝶が静かに彼女の白い指に留まったその刹那、ぶわりと煙のように解けて消えた。あ、と立香の口から音が零れる。蝶から溢れた煙がゆるゆると空中を彷徨い、やがて文字となって浮かび上がる。
『ゲームをしよう。単純だ。先に声を上げたほうが負け』
はあ?と立香が突然始まった宣誓に、オベロン何がしたいのと振り向こうとした。けれど、その彼女の腰に男の大きな手の平が添えられる。その肌を舐めるような感触。立香は上げそうになった声をぎりぎりで堪えた。
――ゲームは始まっている。下手な声を上げれば、訳も分からぬうちに負け扱いだ。この勝負、なんだか嫌な予感がするぞと歴戦のマスターの勘が告げたので、咄嗟に声を押し殺せた自分を立香は褒め讃えた。が、既にこの勝負は始まった時点で、彼女にとって非常に都合が悪い状態になっていることは、今の彼女の知る由も無いところであった。
するすると添えられた手が、ネグリジェ越しに彼女の腰を撫ですさる。恐らくシルクで出来ているのだろう。そのつるりとした感触の服の上から柔肌を堪能するオベロンは、ゆっくりとその手を彼女の股の方に降ろしていく。中央には触れず、あくまでも骨盤と股の付け根のラインを指を差し込むようにして進めれば、彼女の体がびくりと震えた。生地の滑らかさも相まって、難なく深いところまで指が入り込んだ。そのまま、ほんの少しだけ―、彼女の股を外側に押し広げる。決して乱暴にせず、大きな力の籠らない柔らかな誘導に抵抗は無かった。
ぶるぶると立香の手が震える。手に持った端末を落とす寸前。彼女はそれをサイドテーブルにがつりと手放す。そんな彼女の震えを宥めるように、男の手が彼女の股のラインを、そして腰の骨を撫で上げた。そんな触れ方をされたら余計に全身が震えることなど知っていように。この男!と立香は必死に声を嚙み殺した。非常に遅ればせながら、ネグリジェを着たのはまずかったと彼女は反省する。一度着た柔らかく蕩けるような生地がとても着心地が良かったから。これを恒常のものとしようと思ったのだが、まさか自分自身を快感に苦しめるアイテムになってしまうなんて予想外すぎる。
そして、何よりも生地を擦りつけてくるこの手つきが最悪だ。するすると優しく強く――。慣れない感触は彼女の中にマグマのような熱を齎している。後悔を内心で漏らしている間にも、不埒な両手が腰から上へと昇ってくる。くすぐったさと得も言われぬ感触に立香は身をくねらせた。その動きが、暗い部屋の中で影となって踊る。
(やあ、これは中々)
オベロンは舌なめずりをする。随分と官能に訴える動きをしてくれるものだ。興が乗ってしまうなと彼は嗤う。やがて彼の手は彼女の脇の少し下、乳房の下に落ち着く。彼女の下着のラインをゆっくり辿ってやれば、ふっふっと立香の口から苦しそうな息が出る。するすると指を前の方、彼女の乳房の間まで滑らせれば、かつりと何か金属らしきものに触れた。
おや?これは…。どうやら今日の自分はとても運がいいらしいとオベロンは自らの幸運EXに感謝する。以前見たことのある構造を思い出しながら、彼女の前を弄れば、かちんと何かが外れる音がして、彼女の二つの膨らみがふわりと横に前に広がった。
(ああああ!)
と立香は内心で絶叫する。なぜ!よりにもよって!今日に限って!自分はフロントホックの下着を身に着けてしまったのか!!オベロンが彼の手を彼女の体から離せば、上体をやや後ろにしていた彼女の肩から肩ひもが下に下に勝手にずり落ちていく。立香がなんとかそれを阻止しようと腕と手を動かそうとしたので、オベロンは素早くその手を拘束して、彼女の項に噛みつく。甘い痛みにびくびくと彼女の体が震えて、その動きが更に肩ひもの落下を助長する。彼女の乳房を守っていた下着は瞬く間に滑り落ち、――腰元まで落ち切って、漸く動きを止めた。
(落ちちゃった……)立香は半泣きになりながら、その事実を確認する。
早鐘の鼓動を皮膚越しに聞きながら、オベロンは彼女の肩越しにふたつの膨らみを見た。薄い生地にふんわりと丘があり、その頂がぷくりと生地を押し上げている。目を凝らせば、薄いピンクが透けて見えた。立香も彼の視線がどこにあるのか気づき、前屈みになって胸元を隠そうとする。
馬鹿だなぁとオベロンは彼女の愚かさを愛しながら、その両手を彼女の手から離して、もう一度乳房の下に宛がった。
「……ぁ」
小さな声が漏れ出たが、見逃してやる。オベロンは乳房を持ち上げたかと思えば、まるで乳しぼりでもするかのように輪っかになった手に力を込めて中央に向かって走らせた。
「~~~!!」
なんとか悲鳴を飲み込んだ立香は、ふうふうと息を荒げて衝撃をやり過ごそうとするが、オベロンの手は止まらない。二度三度と彼女の乳房は擦り上げる。その度に立香は身を捩って、股の間を濡らした。オベロンか彼女の体を脇から挟むように抱え込み、彼女の伏した体を上向ける。はっはっと口から涎を零しながら、立香は天井を見上げた。体に力は入らず、背後にあるオベロンに体重を乗せた状態だ。
オベロンが彼女の汗が滲み始めた米神に優しくキスをすれば、茫洋とした立香の目に少しだけ正気の光が戻って来る。それを認めて、オベロンは彼女の唇に人差し指を当てながら、「Shh……」と呼気を吹きかける。
立香は瞳を伏せて、彼の首筋に額を摺り寄せる。彼女の眦から涙が一つ零れ落ちた。もう一度彼女の顔にキスをしてから、オベロンは彼女の顔を正面に促す。彼の言われた通りに視線を戻せば、白い生地の上に先ほどより立ち上がる影が見えた。恥ずかしいと立香が瞳を閉じようとした時、オベロンがそっと彼女の膨らみの横にある生地をつまんだ。――生地をぴんと引っ張って左右にずらした。
「っっ!」
シュッシュッと滑らかな生地が容赦なく彼女の乳首の上を走る。胸の頂が、腹の奥が、摩擦と摩擦以外の何かで燃えるように熱くなっていく。立香は唇を切れるほど噛んで堪えようとするが、彼女の抵抗を嗤うようにしゅるりしゅるりと優しく生地が彼女の乳首を舐める。甘い痺れに追い立てられるようにして、立香は大きく背をしならせた。
触り心地のよい生地を手放して、オベロンは立香をを抱きしめる。彼女のはっはっと獣ような息と戦慄くような痙攣を全身で味わう。大きく脈動する彼女の腹にぴたりと手を当てた。ぐりぐりと服の上から胎を撫でさすってやれば、彼女の震えは激しくなる。生理的な涙がほろりほろりと零れ落ちた。少し塩味のするそれを啜り上げながら、(ああ、|なんて可哀そう……《彼女の肉を噛みちぎりたい》)と矛盾することを思った。オベロンは彼女の体を浚うようにして横抱きにし、ベットの上に横たえる。彼女の背に大きな枕を差し込んでやり、体を息がしやすいように整えてやる。一見なんとも甲斐甲斐しい手つきだが、――。
彼女の足先に座り込んで、オベロンは立香を見た。上半身が持ち上げられているので、彼女の顔がよく見える。向こうからもこちらの動きがよく見えることだろう、と彼はうっそりと嗤った。
恭しく彼女のつま先にひとつ口付けて。オベロンはするりと彼女の裾から頭を突っ込んだ。
「!」
まるでガータートスのようにスカートの中に戻りこんだオベロンに立香は目を丸くする。まさか――。彼の暗い髪がうっすらとスカート越しに見えた。光に透かして見れば、彼の輪郭も何と無く捕らえられる気がする。この時になって漸く彼女は「あ。この服もしかしてめちゃくちゃ透ける?」という事実に気が付いた。が、時に既に遅し。
オベロンはスカートの中から彼女の薄肌をしっかりと堪能していた。彼女の内股に手を滑らせれば、その肌が仄かに薄ピンクに染まっていく。確か、彼女の故郷でサクラ色と言うのだったか。彼女の興奮が血の流れを早めるその様を楽しんでいたら、ふと彼女の左の太ももに割と大き目な傷跡に気付く。よくよく見れば、彼女の脚のあちこちに傷がある。何度も見たものだ。すっと彼の中の興奮が冷めていくのを感じて、ため息を吐きそうになる。醜いなど死んでも思わない。――が、彼女の諦めの悪さには唾棄したくなる。こんなにも傷ついて、それでもこの足はまだ前に進むのだ。彼にとってゴミにも等しい連中の為に、彼女に傷を負ってほしくなどないのに。となんだかやる気を無くし始めた彼の眼の先で、彼女の脚が揺らめいた。
彼の視線から逃れるように持ち上げれた両足に、思わず手が伸びた。ぐっと彼女の閉じた両足を掴んで押し開かせる。彼女の白い下着が現れた。独特の香りに誘われて、顔を近づければ下着がうっすらと湿っているのが分かった。それを見咎めて、オベロンは唇の端を上げて嗤う。
全く、とんでもない悪女だ。こちらが気が引けたところに誘うような仕草をして。彼女にそんな気はさらさらないと分かっていて、オベロンは全てを彼女のせいにした。彼女に妖精眼があれば、さぞ憤慨したであろう。全く幸いなことだ。
オベロンはその花園に口づける。下着ごと吸い上げれば、触れた感触に彼女のナカが震えるのが分かる。ふうと息を吹きかけてやれば、びくりと子ウサギのように跳ねた。実に可愛らしいことで、とオベロンは再び口を彼女の下着に重ねる。じゅるじゅるとはしたなく啜り上げながら、舌を押し付ける。
そんなオベロンの様相など知る由もなく、ただ服の下を伺い見ることしかできない立香は、必死に顔を枕に押し付けて、快楽に耐えていた。今日はずっと耐えてばかりだ。と彼女は弱弱しく内心で呟く。いつもの睦愛の時も、羞恥から声を控えることは多いが、全く持って声が出せないということがこれ程に体の中に熱を籠らせるものとは知らなかった。ああ、もう諦めてしまいたい。こんな時ばかり、ひばりと彼が称する彼女の愛声を喉奥から叫んでしまいたい。と切に思った。だが、始めてしまったものを止めるということが出来ない彼女はこの責め苦を耐えるほか無い。なんともそんな性分とオベロンならば言うだろう。――そんな彼女だから放っておけない彼なのだが。
彼が服の下に潜り込んで彼女の花園を散々に悪戯した結果、彼女の白い下着はびちゃりと濡れ透けて彼女の下生えの色を教えている。ぐっしょりと濡れそぼったそれをオベロンは乱雑にずり下ろしていく。イヤイヤと彼女の脚が抵抗する動きを見せるが、じゅうと彼女の腹を口先で啜ってやればすぐに大人しくなる。腹を舐めながら、ちらりと上を見れば、彼女の乳房とその上にある赤い乳首が見えた。味のしないはずのそれから感じる蜜味を思い出し、じわりとオベロンの口の中に唾液が溜まる。(後で絶対いじめてやる)と――後ろ髪をひかれながらオベロンはスカートの中から抜け出る。
ひゅうひゅうともはや息も絶え絶えになった立香はスカートの中の影が動くのを見て、やっと解放された、許されたと安堵して瞳を閉じた。ああ、ひどい目にあった。もうこのまま意識を手放してしまいたい。そう願う彼女の顔に無情にも誰かが近寄る気配がする。……言わずもがなだが、渋々と彼女は瞳を開いた。そして、そのまま目と口を大きく開けて絶句した。
ダークグレイの髪はしっとりと下ろされ、長い睫毛に縁どられた青い宝玉。まさしく絶世の美貌の男が、彼女の下着を口に咥えてこちらを見ているではないか!変態!と立香は叫びそうになって口をばちりと手で叩く。危ない。危ない?あ……。
ここにきて立香は漸く自分が最初から負け戦に挑んでいることに気付いた。そうだ、彼女は彼の成すことに何も言えないのだ。ゲームに負けていなくても、勝負に負けている。最悪だ、と彼女は眩暈がする頭を押さえた。彼女の内心を見るオベロンは、声が出せたならげらげらと笑っていたであろう格好で息をひっひっと吐きだしている。
(笑い過ぎて、咥えていた下着を彼女の胸の上に落とした)
こ、このやろう……立香は心から憤慨した。このまま引き下がってなるものか!彼女の負けん気に火が付いた。
どうしたら、どうしたらこの男に一泡吹かせてやれるのか。ふとそんな彼女に閃きという名の何時かの女子会のトークが走馬灯のように流れていった。確かあれはメイヴちゃんあたりの……。よし、と未だ声無く笑うオベロンの姿を横目に彼女は足先をそっと動かした。
「wwww っ!!!」
笑っていたオベロンの顔が引きつった。恐る恐ると彼の股座を見れば、立香の足先が彼の逸物に添えられている。ごくりと喉が鳴った。まさか世にいう金的なるものをする気ではないだろうな。流石にサーヴァントといえど男性体にとっては紛うこと無き急所だ。立香はにんまりと笑みを浮かべ、足先を動かした。つつつと下から上に彼のものを撫で上げる。びくっと彼の体が震えた。次いで、彼の顔に羞恥らしき赤い色が載る。やっと一矢報いたと立香は内心で歓声を上げる。そして、これが止めと彼女はスカートの裾を持ち上げて、オベロンに命令した。
(これ以上オイタがしたいなら、この裾を咥えなさい!)
光る彼女の左手と告げられた言葉にオベロンは頭を抱えそうになった。こんなことに令呪を使う奴があるか!しかし、されど令呪。彼女の許しを請いたくて裾を口にすれば、まるで飼い主に縋る犬のよう。けれど、それをしなければこの先には進めない。ぐぬぬと今度はオベロンが内心で臍を噛む。やったやったと立香はその悔しそうな顔を見て笑う。
二人の間に沈黙が流れる。お互いポーカーフェイスを決めながら、相手の動向を伺っている。何の戦いなのだろう、これは。段々と冷静になる思考が、疲労感が立香を襲う。もうやめて大人しく寝ようと提案しようとして、立香は久しぶり喉から音を出そうとした。
けれど、そんな彼女をオベロンが制止した。困ったように笑って、そして、ゆっくりと差し出された裾を掴む。
え、まさか、そんな……嘘でしょう?と立香の瞳がオロオロと動揺に彷徨う。彼女が止めるべきか悩むその間にオベロンは彼女の白い生地の裾を――食んだ。白い布を口に含んだまま、彼は声無く彼女に問いかけた。
『これでいいかい?』
あのプライドの塊のような男が!ああ、もうこれだから質が悪いのだと立香は白旗を振る。少し背を浮かせて、オベロンの顔に手を添える。近づいて来る立香の顔に事を察して、オベロンは布を口から離した。お互いの唾液を交換し合うように激しい口づけが始まった。びちゃびちゃとはしたない音を立てながら、お互いの体に弄りあう。立香の視界の端、暗い部屋の壁にゆらゆらと動く影が映った。
気が付けばオベロンがその下半身の前を寛げて彼の逸物を彼女の入口に宛がっている。立香が自分からゆらりと腰を押し付けてやれば、ずるずるとそのまま立香のナカに侵入してくる。きゅうと彼女の中が窄まる。はっきりと彼の形を感じ取って、更に彼女は高みへと昇っていく。はあはあと酸欠気味なりながら、立香は閉じていた目を開いてオベロンを見た。視線を感じてオベロンが合わせていた唇を離す。口と口を繋ぐ銀糸がぷつりと切れる。
ふと、立香の目に彼との交わっている部分に白い生地が雲のように溜まっているのが目に付いた。見えなくとも、突き上げられる振動とぐちゅぐちゅという水音からその生地の下で何が起きているのか察せてしまう。かああと彼女の体に一層の熱が駆け巡る。豊かな想像力が年頃の娘には刺激的過ぎた。やることをやっているのに刺激的も何もないが、ここに至って彼女の貞節さというか、乙女のような反応にオベロンは失笑する。わざと彼女と結合している部分から魔力を流し込んでやった。
「ぁっ!」
ぱんっと彼女の臀部から弾けるような音が、一度、二度三度。動きに合わせて聊か多めに魔力を注いでやった。
「あああ!」
うねる様なナカの動きと魔力にとうとう彼女の口から喘ぎ声が飛び出る。ちかちかと明滅する彼女の視界に緑の蝶が閃いた。最初の頃と同様に蝶が解けて、空中の文字になる。
『きみの負け』
どっと彼女の体から力が抜ける。ああ、負けてしまった。勝負にも負けて、ゲームにも負ける。泣きっ面に蜂とはこのこと。
「さて、どんなお仕置きがいいかな?」
にこにこと、今まさに女と交わっているとは思えぬ爽やかな笑みでオベロンが敗者宣言を告げる。
「…………」
じとりと立香は彼を見る。だまし討ちにもほどが無いだろうか。自分が一体何をしたというのか。そう言いたげな彼女の視線を撥ねつけて、オベロンが言った。
「ベットの上でこんな服を着て、お誘い以外の何と?」
ぶすーと彼女顔が膨らむ。もう一度にっこりとオベロンは笑って、彼女の服を捲り上げた。激しい交合の末、ぐちゃぐちゃに濡れそぼった彼女の下生えと彼女の赤々と立ち上がった乳首が暗い光の中に晒される。
「や! もう、だから! 変態! 助平!」
その激しく糾弾する口にオベロンは白い生地を突っ込んだ。うぐっと苦しそうな立香の声がする。無視をした。
「さて、本番と行こうか。…ああ、そうだ。うるさい口も閉じたことだ。存分に声を出していいよ。我慢するのは辛かったろう?」
出せるもなら――という音無き、続きの言葉を拾って立香は蒼褪める。きゅうと彼女の眉間を寄せて、オベロンに手心を訴えるが、オベロンはそれを黙殺する。はぁと艶やかなため息を零して、彼女の腰をしっかりと掴む。瞳を閉じて、温かな彼女のナカの感触に集中すれば、もう一度ため息が出た。声を我慢していたのは何も彼女だけではない。
「いつもきみの声が大きいからねぇ?俺の声が届いていないだろ。恥ずかしいけれど、今夜は俺がひばりの役だ。存分に――、耳を澄ましてくれ」
オベロンは、腰を引く。そして、間髪置かずに前に突き出した。ぱんぱんっと肌がぶつかる音が室内に響く。その合間に彼の呼気が零れ落ちていく。ガクガクと身を震わせながら、立香は聞こえてくる声に耳を塞いでしまいたかった。女の自分より余程色っぽい声が耳を打つ。彼が喘ぐ度に彼女のナカがキュンキュンと彼自身を締め付けてしまう。
「はっ、はっ、……あ、う、。そんなに締めないで。イッテしまいそうになる」
あ、あ、気持ちいい――と彼が口にする。こんな天国のような地獄があるだろうか。彼は自分の言葉の破壊力を知るべきだ。否、知っているからこそのこの所業か。などと現実逃避しながら、立香は快感から意識を逸らそうとするが、無駄な抵抗に終わる。口の中の生地をべちょべちょにしながら立香は何度も絶頂した。(あ、今イった? ナカが締まったよ。ああ……、そんなに吸い付かれたら出ちゃいそう)もう黙ってほしい。
もはや何度絶頂したのか分からぬ頃、漸く彼がその白濁を彼女の中に注いだ。乱れた髪をかき上げて、一息。うっと苦し気な声が立香から漏れる。その声に思い出したかのように、オベロンが彼女の口からずるりと生地を引き出してやる。彼女の口周りが唾液で汚れるが、二人に気にする余裕は無かった。
「あ、は、あ、ぁ」
立香の口からはか細く病人のような声しか出ない。声帯はいつもより抑えられたはずなのに、喉奥が痙攣して上手く動かせないのだ。
「立香、気持ち良かった? ナカ凄かったねぇ。俺のに吸い付いてきて、いっぱいオネダリシテくれたのに、意地悪してごめんね?」
「ん、ぁ、ふっ。お、オベロン……」
彼女のナカが打ち震えている。もはや痙攣と変わらないそれにオベロンは緩く腰を押し付けた。すると、彼女のナカの最奥がきゅうと彼の先に吸い付く。ちゅうちゅうと口づけるように、彼にナニかを強請った。
「なあに? もっと欲しいの?」
彼の腰が重くなり、ぞくぞくと背中から首まで這い上がる感覚がする。その快感に委ねて、彼の逸物が固さを増していく。そんな彼の変化を体の内側から感じながら、立香は途切れ途切れに言葉を発する。
「はあはあ……ね。今度、、もっとエッチなやつ、はぁ、……着てあげようか?」
彼を挑発するように両足を彼の腰に絡ませた。
「は?」
「オベロンって、結構、俗っぽいのが好きなんだね。ん、あん、……ふふ、大きくなった。可愛い」
「……」
ビキリと彼のこめかみに青筋が浮かんだが、立香は変わらず微笑んだ。まるで聖女のように、悪魔のように。そうして、固まる彼の耳にそっと囁いた。
今度はオベロンが服を作ってね、なんなら下着でもいいよ。
とびっきりエッチなやつね――。