Mistakes are the portals of discovery. ――失敗は発見への入り口である。
とは偉人の言葉であるが、これはただ単純にこの女がどうしようもないほどに馬鹿なんだろうと、オベロンは目の前にいる二人の少女を見て思った。
その冴え冴えとした視線に思うところがあるのか、正に瓜二つ、鏡を写したかのような二人の少女は居心地悪そうに視線を下に逸らした。
「それで? きみたちは愚かにも、マスターの代わりがいないのならスペアを作れば良いじゃない、という蠅よりも小さな脳みそで考えたであろう発想で、あまつさえそれを実行してしまったと……ははは、馬鹿なの?」
『すみませんでした』
いつも聞いている声が二重奏になって、オベロンの脳がバグりそうになる。ただでさえ頭が痛いオベロンは、黙れと視線と手のジェスチャーで二人のマスターを制する。カツカツと足先を鳴らしながら、腕を組んで言葉を続ける。
「ああ、本当に嫌になる……馬鹿馬鹿しくてね! きみたちに『存在の分割』の術を施したトンチキ陰陽師は、善性サーヴァント達にめったくそに仕置きをされている最中らしいけど」
オベロンはそこで言葉を切って、ジロリと二人のマスターを睨み付けた。
「問題はきみたちを元の一人の存在に戻す方法だ」
オベロンから見て右の立香が、がっくりと首を落とす。
「そ、それに関しては本当に私も予想外というか」
「まさかそんな方法しか無いなんて思ってもみなかったていうか」
その反対側の、左の立香が弱り切った声音で言い訳。そして、二人は縋るようにオベロン見た。そんな二人の態度がさらにオベロンの苛立ちを募らせていく。機嫌の悪さを強調するように彼は近場にあった椅子を蹴りつけた。ガンッ!と大きく鳴ったその衝撃音に立香達は青ざめ身を寄せ合った。
「あ゛ーーーー! 今すぐ! 狂いたい! 脳みそをグチャグチャにして何も考えない虫になりたい!!」
ふーっふーっと彼は背中を膨らませながら怒気を吐く。二人の立香はそろりと互いの視線を絡ませて、オベロンに気づかれないように小さくため息を吐いた。まさかこんなことになるとは……。オベロンが狂いたいと言ったが、狂いたいのは立香の方だった。二人が元に戻る方法、カルデアの叡智が出した答えは――パスの接続だった。つまり、何が言いたいかというと、……もう一人の自分と乳繰り合え、ということらしい。地獄か。
ガツンと新たな衝撃音がする。立香達がびくりと下げていた視線をオベロンの方に向ければ、彼はその額をマスターの部屋の扉に打ち付けていた。ゆらりと彼が振り向く。普段前髪に隠れている白い額が所々赤くなっていた。
(い、痛そう)
「黙れ。……百歩、いや、千歩譲って、きみたちが馬鹿みたいな生殖活動モドキという奇行に走るのはいい。俺には何ら害がないから」
『ひど』
「くない。自業自得だろうが。……なんでっ! 俺がきみたちのパスのコントロールをしなきゃいけないんだ!! 地獄か!? 労基に訴えるぞ!」
ご尤もなコメントに立香達は肩を小さくする。だがしかし、事実は変わらない。幾ら人理を救世しようとも、数多の特異点・異聞帯を攻略しようとも、藤丸立香のスペックは向上しない。素人に毛が生えた程度の魔術師でしかないのだ。二つに分かれた存在を一つに戻すという繊細なパスのコントロールは出来ない、というのがキャスター陣の見解だった。誰かが彼女たちのナビゲーターとして接続を誘導しなければならなかった。憤怒収まらぬオベロンの姿に立香達は顔を見合わせる。そして、眉を下げて「他の人に頼む?」「そうする?」と小声で話し始めた。ぐりんとオベロンの顔が二人に向けられて、そのまま歯をむき出しにしながら咆哮を上げる。
「その口、二度と聞けないようにしてやろうか!」
『ぴゃいっ!』
シンプルに怖い。カチカチと彼の背中から大百足が口を鳴らして威嚇している。そして、その足下から蟻や蜘蛛たちがじわりと包囲網のように二人が座るベットの周りを取り囲んだ。絶対にこの部屋の外に出すものかという意思が感じられる。
――そうなのだ。結局、オベロンは他の誰かにこの役割を明け渡すことなど出来ない。だって、立香とオベロンは所謂、恋人同士のようなそんな関係だったので。明確に言葉にしたことなどないが、求めては求められる深く繋がった存在。夜を共にしたことも一度や二度ではない。だから、怒ってはいるが行為が嫌だとかそういうことではなく。「じゃあ、ナビゲーターはオベロンな」と周知の事実として認識され、当然のようにマスターの部屋に放り込まれたのが気に入らないだけだ。二人の関係は隠していない。……隠してはいないのだが、センシティブなところなので雑に扱われたくはなかったオベロンである。宜なるかな。
深呼吸を一つ、二つ、三つ。最後に大きく息を吐いて、オベロンは自らが蹴倒した椅子を引きずりあげた。それを二人が座るベッドの側に立てて、どっかりと胡座をかいて座り込む。頬杖をつきながら彼は一言、「どうぞ」と投げやりに呟いた。
『え?』
「え? ……じゃないんだよ。本当に二つの存在に確定する前にさっさとヤリなよ」
胡乱げな視線が二人の立香に刺さる。
「いや、でも、……」「わ、私たちだけじゃ。ね、ねえ?」
「やる気が出ない」とオベロンは無情に二人の縋る言葉を切り捨てた。
そ、そんなー!と二人は揃って鳴き声を上げた。情けない二人の表情に幾ばくか溜飲が下がったオベロンは、漸く笑みを見せた。しかし、心底人の悪い笑顔で。
「俺のやる気が出るように、場を盛り上げてくれよ」
オベロンの言葉に二人の少女の頬がピンク色に染まる。もじもじと手を摺り合わせたり、足先を組み替えたり。ちらりと右の立香がオベロンを上目遣いに見た。
(本当にやらないとだめ?)
と心の声がオベロンの妖精眼に届くが、彼は肩を竦めてニヤニヤと嗤うばかりだ。
仕方ないと腹を括ったのか、左の立香がもう一人の自分に向き直る。彼の言葉を借りるが、本当に自業自得なので。……責任は果たさねばならない。
「ん」「っ!」
ちゅう、と左の立香(ややこしいので、一人目を立香、二人目をリツカと呼ぶ)がもう一人の自分の唇を吸いあげる。リツカは動揺に一瞬身を震わせたが、直ぐさま、立香の唇に応えるように舌を差し出して零れた唾液を啜った。
「ちゅっ……ん……ふ、あっ……」
唇を重ね合わせながら、二人は自分が来ている礼装を少しずつ剥ぎ取っていく。
「あっ……やっ……見ないで……オベロン、は、恥ずかしいからっ……」
その言葉にオベロンはハッと自我を取り戻す。思わず見入ってしまっていた自分を誤魔化すように言い捨てた。
「見ないと盛り上がるも何も無いだろ? ほらほら、頑張って♡」
悔しそうに、否、恥ずかしそうに立香がオベロンを睨む。が、仕方ないと諦めたのか、がばりと上着を脱いだ。白い肌が蛍光灯に晒され、リツカがその肌、胸の谷間に吸い付いた。そして、首筋を辿るように上に唇を滑らせる。
「……あんっ」
ぷつり、とリツカの背から金属が外れる音。合わせるように、立香も彼女の背の金具を外す。黒いスポーティな下着から少女達の柔らかい双丘が転び出る。嚥下する喉の仕草でオベロンは自分の口の中に唾液が溜まっていることに気づいた。が、その動揺は噯にも出さない。白々としたオベロンの視線の先で、二人の少女は素肌を重ね合わせ、くちゅくちゅと舌を絡み合わせる。
「ん、ふぁ……っ! んむぅ、はぁ……んっ」
ぱらぱらと立香の緋色の髪が舞う。あっ、あっ、と彼女の薄桃色の唇から拙い喘ぎ声が零れた。
(気持ちよさそうにしちゃってさ)
リツカがもう一人の自分の肩越しにオベロンを見た。蜂蜜色の瞳が、オベロンのポーカーフェイスの下にある欲望を見抜くように見つめてくる。(くそっ――)オベロンは内心で舌打ちをした。
ジーッという音としゅるりしゅるりという衣擦れの音。到頭、二人の少女は黒い下着だけになった。膝立ちになった立香がゆっくりとその黒い下着を脱ぎ下ろす。思わず、オベロンはその黒を視線で追った。ぱさりと音を立ててその小さな下着はベッドの縁からその下に落ちていった。その黒から苦心して視線を外したオベロンの耳にリツカの声が届く。
「オベロン……」
二人の立香がオベロンを見ていた。その瞳は水の膜で揺れ、助けて――、と小さく彼女達の唇が震えた。
「ハッ……上等だよ」
のっそりとオベロンはベッドの上に這い上がる。その黒いマントは椅子に置き去りにされ、蟲達は塵芥となって消えていった。オベロンが立香の背をとんと軽く押せば、二人の少女は折り重なるようにベッドに倒れ伏した。
「あっ……」「ゃっ……!」
「あーあ、グショグショじゃないか」
立香の秘裂に指を這わせながら、オベロンはリツカに顔を寄せる。
「あ、は……んんン……♡ ……あ、あぁっ……そこ、だめっ♡」
喘ぐ立香を無視して、オベロンはもう一人の彼女に囁く。
「ぼうっとしてないでさ。きみたちがパスを繋げないと意味がないんだから、……頑張ったらご褒美をあげるよ」
オベロンはリツカの花芽に指を添えたが、それだけだった。あぅ、とリツカが涙ぐむ。
彼女の心が、シテシテ――とオベロンに請うが彼はもう一人の自分を愛撫するだけ。刺激が欲しい。お腹の奥が切なくて堪らない。
「んぅう♡ はむ、むふ♡ ふっ♡」「んぅ!?」
むっちりと唇を尖らせて、リツカは立香の唇にむしゃぶりつく。舌を差し込み、何度も甘噛みする。びくり、と立香が体を震わせてイヤイヤと首を振った。オベロンはヒクつく秘裂からその奥――震える膣に指を差し込んだ。ぐちゃ、ぴちゃと濡れた音が聞こえてくる。オベロンが愛液を掻き出すように指を曲げてその膣壁を擦れば、きゅぅと彼女のナカが鳴った。
「良い調子、――上手だよ」
褒めるようにリツカの花芽を押し転がした。
「あっ、……それぇ、……! もっと、もっと、……してっ!」
「ああっ、……あっ……! んぅ、や、……やぁ、だめっ、きもちい……」
二人の立香が髪を乱しながら身悶える様は、オベロンの腰を重くさせる。そろそろいいかなと指を引き抜いた。
「あ、? な、なんでぇ?」
立香が切なそうに後ろを振り返ってオベロンを見る。指にべったりと纏わり付いた彼女の液を舐めながら、
「あれ? コレいらないのかな?」と己の逸物を取り出した。
彼はくすくすと嗤いながら、そそり立つその熱棒を揺らしてみせる。少女達は食い入るようにその棒に視線を這わせ、たらりとその唇から涎を零した。
『あ……』
「でも、困ったなぁ。俺のコレは一つしか無いんだけど。さて、どっちのお口に入れようか?」
こっちかな?と言いながら、立香の秘所にその亀頭を近づければふるふると彼女の背が揺れた。(早く早く――!)と急く声が聞こえてくる。
「やだっ、……! 私のに、ここにいれてぇ!」
リツカが自分の足を持ち上げて、その秘裂を大きく開いて見せる。ぱくぱくとその陰部が口を開けて閉じてを繰り返すせいで、彼女の愛液がとろりと菊門まで滑り落ちた。それを見て、オベロンは「ああ、こっちかい?」と容赦なくリツカの膣を剛直で貫いた。
「ひっ! やっ、あぁああ゛ああああ゛ぁあーーーーッ!」
ごりごりと彼女の子宮の入り口をその先端で押しつぶす。強すぎる快楽にリツカの口から絶叫が飛び出て、その体が陸に打ち上げられた魚のようにビクビクと波打った。
「オベロン、オベロン!」
快楽を得られなかった立香が、泣きながらその尻をオベロンの体に擦りつける。
「ははっ、変態♡」
彼女の耳元で囁くテノールが立香の鼓膜と体を震わせる。泣きべそをかきながら、立香が「だってぇ……」と弱音を吐いた。
「滅多に無い機会だ。自分が普段どんな顔をしているのか、しっかり見ておきなよ」そういってオベロンは立香の顔をリツカの方に向ける。
絶頂に溶けた目からぽろりと涙。口を開けて、時折、母音を零すその顔は快楽に染まり、普段の凜とした表情はどこにも無い。気持ちいいと身を震わせている、ただの少女だった。
(恥ずかしい――!/羨ましい……)
矛盾した心の声。それに笑みを零しながら、オベロンはちゅうと立香の背にキスをする。そのまま、ずるずると彼女の体を自分の方に引き寄せた。
「あっ、ああぁっ……や、なに――」
よっ、という声と共にオベロンがその身を後ろに倒した。器用に膝を立てて、リツカの背も浮かせる。何――?と戸惑う声がした。
「仕方ないじゃ無いか。二人とも同時に相手にするには、コッチも使わないと、ね」
むにゅっとオベロンは立香の尻を鷲づかみ、それを自分の顔の方に寄せていく。
『!』
二人の立香の瞳が驚きに見開かれる。つまり、これは――、馬に乗った体勢のアレということか。恥ずかしいと思ったのは一瞬で、次の瞬間には二人は心得たというようにその身を整える。ぴちゃりとリツカの秘裂にオベロンの舌先が触れた。
「あ、ああ……♡」
ぎゅうと二人の少女はお互いの体を抱きしめ合う。リツカはオベロンの剛直でナカをかき回すように腰を動かす。浮かせては沈める。その度に、二人の体の間で乳房が潰れ、小さな蕾が擦れ合う。
「ぁ、ん、んぁ、あっ、オベロン……!」
「ん、ほら、きみたち。上のお口がお留守になってるよ」
窘めるようにオベロンがその腰を突き上げた。
「あっ、あぁっ! ごめん、なさい……、あんっ!」
ちゅっちゅと再び立香達は唇を合わせて、パスを繋げようとする。彼女達の接触により点と点と繋がるように回路が繋がったことを確認。それを見届けてから、オベロンは魔力の流れを調整する。ふうと秘所につけた唇から魔力を押し込んだ。押し込まれた魔力は立香達の回路を巡り、その繋がりを太くする。余剰に流れた魔力はオベロンの逸物を通してオベロン自身に帰るという寸法だ。そうして、まるで水車のように、オベロンはくるくると自分と彼女たちの魔力を回転させた。回転が増えていく毎に二人の体の熱が高まっていくのをオベロンは、うっそりと見つめ、そして――、『あ、あああああああっ』一際強く魔力を流し込んだ。
二人の少女はお互いの体に縋り付くようにして、絶頂する。カクカクと体を震わせながら、上と下の口から体液を零した。その衝撃に、オベロン自身も「んっ」と艶声を零し、白濁をリツカのナカに吐き出した。
「ふ、ん、……ぅ、ぁ……ふ、は、……あ」
ぴゅくぴゅくと注がれる体液にリツカは三度目の頂に登り詰める。ヒクンとその腰が揺れた。
「さて」
そう言ってオベロンはもう一度体を起こす。ずるりと逸物をリツカのナカから引き抜き、力の抜けた立香の体を抱えて、ずりずりと這い上がっていく。ベッドに倒れ伏し、茫洋としていた彼女の瞼が少し上に持ち上がり、顔上を見た。ぽつりと水滴が落ちる。
(あ――)
顔のすぐ上で、オベロンの逸物がぬぷりと立香の秘裂に飲み込まれていた。
「ん、ぁ……ふ……!」
彼のモノが全て飲み込まれた後、ゆっくりとそれが再び体外に出ていく。入っては出て、入っては出てを繰り返していく。段々とそのストロークが早く激しくなっていき、
「あ、ん♡ んん♡ ……んっ! あんっ!! だめっ♡ オベロン! イっちゃぅっ♡」
ぱちゅぱちゅという音と共にリツカの顔に愛液が雨のように降ってきた。オベロンの逸物が往復すると、立香の腹がその分だけ少し膨らむ様が見え、つい、反射のようにリツカはその手を腹に沿わせた。
「やっ!?」
ぐいぐいと腹を押すようにナカで動く何か。その正体が愛おしくなり、リツカはふうと白い腹に唇を寄せた。
「……っんん! ぁ、ぁう……」
立香がその吐息に身悶え、ナカを強く締め付ける。うっとオベロンの呻き声が聞こえた気がした。
「ふふ、赤ちゃんがいるみたい。かわいいね……あっ」
ぐちゅっんとリツカの腹から大きな異音。
「は、は……っ、悪い子だな、悪戯なんて……リツカ……」
腰を押しつけながら、オベロンがぱんぱんとリツカの尻を叩く。
「や、ちが、ああっ……そこ、い、やっ、ああ……っ!」
二度三度ナカをかき回せば、あっさりと彼女は快楽の底に落ちた。カクリと力の抜けた体を放って、もう一度、オベロンは立香の膣内に竿を収める。
「は、は……っ、きもち、……そろそろ良いかな?」
何がとは言わず、オベロンは立香の耳を食む。コクコクと立香が何度も頷く。行くよ、とオベロンは一声発して、腰を激しく打ちつける。
「あっああああああんっ…!」
きゅううと彼女のナカが戦慄いた。
「あ……はぁっ、……つっ!」
その脈動に逆らえず、オベロンはドクドクと震えるままに精液をその鈴口から吐き出した。はぁーっという声と共にオベロンはどさりとその体をベットの上に投げ出す。
「疲れた……」
全身から力を抜いて、天井を見上げる。と、彼の両サイドにふにゅりとした柔らかな感触が――。顔を横にすれば、立香達がオベロンの両腕に抱きついていた。柔らかい肢体が彼の痩せ細った体に突き出る骨を包み込む。
「ごめんね、オベロン」「もうしないから、許して」
しおらしげに謝る彼女たちを鼻で笑い、オベロンはもう一度天井を見る。
(よく言うよ、……安全な方法があるならまた試すくせに)
むにゅ。
「おい」
頬にあたる柔らかい感触が何かなんて言われずとも分かる。白い水饅頭が二つ。むにゅむにゅとオベロンの頬に押しつけられている。――と、彼の下半身にも忍び寄る影。
「どういうつもり?」
するすると蛇のように小さな手がオベロンの愚息をなで上げる。悲しいかな。彼の体は痩せてはいるが、とても健全な青年のものなので、すぐにその棒の硬度が上がっていく。
「オベロンばっかり動いてもらうのも悪いかなって」
「オベロン、おっぱい好きでしょ? ……気持ちよくない?」
ぽよぽよとしたその感触に思わず頬ずりする程度だが、――まあ、悪くは無い。竿をシュッシュッと刷り上げられたかと思えば、精嚢を優しくマッサージされる。夜毎、彼女に奉仕をさせた弊害か。彼の気持ちの良いところを熟知したその手管に堪らずオベロンの口から呻き声が零れた。
「うっ……」
脳が痺れるような甘い立香の声がオベロンの耳元に注がれる。
『オベロン、……イって?』
「……うあっ、っ!」
びゅっと彼の逸物の先から白濁が飛び出て、その竿を伝い落ちていく。はっはぁっと犬みたいに喘ぐオベロンの頬にちゅうと可愛らしいリップ音。
「嬉しい」「気持ちよかった?」
ぶすっとオベロンの顔が不貞腐れる。別に、主導権を握られたくらいどうってことは無いが、それはそれとしても素直に(めちゃくちゃ気持ち良かった――)とは言えない男心だった。
それが分かっているのか、くすくすと少女達が笑う。少しの間、室内に柔らかい空気が流れる。ややもして、彼女らはゆっくりと体をオベロンの顔から下半身へと移動させ始めた。
「なに? 綺麗してくれるの?」とオベロンが尋ねれば、うんと二人は頷く。
そして、競い合うようにオベロンの竿に付いた白濁を舐めとっていく。
「んっ、ふぅ……オベロンの精液、濃くって…、喉に絡み付いて……、美味しい」
「ちゅっ……んぅ……甘いよオベロン……癖になっちゃう」
二人の乳房がオベロンの太ももにずりずりとすり寄れば、その赤い先端が固くなるのが分かった。やれやれとオベロンは二人の揺れる尻に手を宛がう。くぱぁとその秘裂を押し広げれば、とろりと白い精液が蜘蛛の糸のように、ベッドの上のシーツに落ちた。垂れた液を押し戻すように泥濘んだ膣内に中指と人差し指を押し入れる。差し込んだ奥で指を小刻みに動かせば、秘穴からくちゅくちゅという水音と体液が零れ出た。
「あーあ、折角ナカに注いでやったのに。涎零すなんて、困った子だな」
「ふあ、あ゛ッ、ごめ゛な゛ざぃ゛っ♡ んんっ、あはぁっ♡」
「ぁっ……い、言わないでぇ、奥っ、指だめっ♡ んん゛っ♡」
まあ、いいけどね。ほら、早く俺の綺麗にしてよとオベロンが彼女たちの頬にぺちぺちと腰を揺らして竿を当てる。再び、柔らかい唇がオベロンの竿の薄皮を食み、ちゅるちゅると啜る。リツカが精嚢の片方を咥え、立香が鈴口に吸い付く。
「っ! 吸って……」
ちゅうと二人の頬が窄まってオベロンの性器を刺激する。はぁっとため息を零しながら、オベロンは激しく指を動かした。
「あ、あ……、もっと……、もっとっ、強くしてっ、ああ、あっ……!」
「ああっ、も、だめ……っ、お、おねがい……っ、」
ああ――!と三人の声が部屋の中に響いて、生臭い匂いが充満する。絶頂した立香が頬ずりしながら再びオベロンの逸物を舐めようとしたので、オベロンは無理矢理彼女たちの体を引っ張り上げた。
『あん♡』
「もうだめ」
えーと不満げな声がハウリングする。
「いいから、おいで」
二人の腰を抱き寄せてオベロンは、お休みと二人に声をかけた。すると、立香達は先程までの痴態が嘘のようにすうと眠りに落ちる。
(回路の繋がりは、ほぼ9割ってところか)
このまま抱き合って眠っていれば、起きた頃には二人の立香は居なくなり、いつものマスターが側に居ることだろう。さて、その時はどう落とし前をつけさせようか、と独り言ちながらオベロンも眠りの狭間へと落ちていった。しっとりと汗ばんだ、甘い匂いのする体の感触は夢に見そうなほど気持ち良かった。
「ほんとーーっにごめんなさい!」
ぱんと手のひらを合わせて、立香が頭を下げている。オベロンは柔やかに笑いながらもその目は笑っていない。
「いやぁ、本当に苦労したとも! でも、他ならぬマスターのピンチとあっては、この俺も体を張らざるを得ないってわけ……二度目は無いと思えよ」
最後のドスの聞いた低音に、更に深く立香は頭を下げた。弁明の余地なし、トホホと立香がほろ苦い涙を零したところ、下げた視線の先にアルトリアの顔が沸いた。
『うわああっ!?』
二人の悲鳴が木霊する。
「あ、アルトリア! 君、一体どこから顔を出しているんだ!!」
「え? オベロンの足の下からですけど?」
当然のように言うアルトリアに、この天然娘がぁ!とオベロンは痛む頭を押さえた。どこで教育を間違えたのか。振り返れども、初めから――という言葉しか出てこない。やっちまったな、妖精王。
よいせっとオベロンの足の下から抜け出したアルトリアが、ぽんぽんと立香の肩を叩いて慰めた。
「大丈夫ですよ、立香。オベロンだって、役得とか思ってるんですから」
「勝手に人の気持ちを捏造しないでくれる?」
うげぇとオベロンが舌を出して、吐く仕草をする。それをせせら笑いながら、アルトリアは言葉を続けた。
「よく言いますよ。起きて戻っていなかったら、あわよくば二回戦とか思っていた癖に」
ビシリと固まった彼の様子を見るに当たっているようだ。立香が期待に満ちた目で見てくるのが辛い。
「プライバシーの侵害だ!」
苦し紛れにそう言えば、アルトリアがふむと手を口に宛てがい、考え込んだ末、
「例えば、ここに全裸にコートを着ただけの変態がいたとします」
オベロンと立香の顔がしょっぱくなる。想像したくないのに、脳内にその映像が再生される。
「その人は、コートを開いて無様なものを見せた後にこう言いました。「キャーッ、見ないでぇ!」
オベロン、どうします?」
「殴り飛ばす」
ですよね、とアルトリアは頷き、手元の杖を握りしめた。待て待て待てとオベロンが手を上げる。
「何で君は今俺を殴ろうとしているのかな?」
アルトリアは自分を指さして言いました。アイ・ハブ・ア・ヨウセイガン。そして、オベロンを指さします。ユー、モウソウミセル。ヘンタイとイッショ。
「一緒じゃねーわ!!!」
オベロンは腹の底から絶叫した。