交響曲★八章:星と歌う子守唄

深い夜に一つの影が立香の傍に立った。
「オベロン」
黒いマントを纏った彼は、ベットに横たわる立香の髪を優しく梳く。
ごめんなさい、と彼女は泣いた。ごめんなさい、ごめんなさい。
「……ずっと不安だった」
オベロンはそっと彼女の頬に手を当てて、囁く。
「調べても調べても解決方法は見つからなくて…。こんなの前例なんて無いんだから、調べたって無駄なのにね。でも、それしか、出来なかった。やっぱり俺なんかを愛したせいなんだ――って。そう思ったらもう後は、きみごと奈落に落ちたほうがいいのかな、とか考えてさ。そうしたら、アルトリア達に殴られた」
がつーんと殴られたそぶりを演じて見せたオベロンに立香は首を横に振った。違う。オベロンは何も悪くないと瞳が訴えている。
うん、とその立香の訴えに頷きを返して、彼は言葉を続ける。
「殴られたら、大事なことを思い出した。俺としたことが、すっかり油断していたよ。奈落に落ちる前に、まずはきみを捕まえなくちゃね」
「?」
「ねえ、きみがどう思っているかなんて知らないけど。きみが何処に行ったって、何になったって、俺はもうきみを逃がさないよ。こんな|世界《舞台》に俺を引きずり込んだ責任取ってもらわないと割に合わないじゃないか。だから、……俺ともう一度契約を交わそう。この契約を交わしたが最後、きみは永遠に俺から離れられない。死んだってきみの魂は奈落の底だ。アラヤにもガイヤにも、誰にも渡さない。いいね?」
奈落の虫が、泣き暮れる薄紅色の娘の手を取って、その指に契約の証を差し出した。金色に光るその金剛石は、娘の傷だらけの左手に、――星のように美しく輝いた。

『氏名をどうぞ。』
ひとり、白い壁の前に立ち、オベロンは無機質な音声に答えを返す。
「オベロン・ヴォーティガン」
『氏名と声紋パターンを認証。入室キーワードをどうぞ』
「<子守唄を>」
『キーワードを認証。開錠します』
ごおんと重々しい音を響かせて、壁は開かれる。壁の向こうは、暗く先が見えない。その暗闇に何の感慨も抱かず、オベロンは中に進み行く。暫し暗闇を歩けば、ダウンライトに照らされた廊下が現れる。薄い光に導かれるままに彼は歩を進め、やがて一つの光の扉の前に辿り着いた。
扉の前とサイドからスキャンの光線が現れ、オベロンの白い顔を照らした。一通り、光の線が通り過ぎて、二つ目の扉も開かれる。先ほどと違い、軽い電子音が暗い闇の中に響いた。
「やあ、オベロン」
室内にいたダヴィンチが声をかける。アスクレピオスは一瞥を、パラケルススは会釈を返す。
「ご苦労様。…調子はどうかな」
「昨日まで正直変化なし。って感じだったんだけどね。今日は随分と。目に見えて数値が改善している。理由が分からないから、ちょっと不安だけどね」
そう、と感情無く答えてオベロンは部屋の中央を見やった。部屋の中には、ガラス張りの部屋がもう一つ。そのガラスの壁まで歩き、彼はダヴィンチに扉を開けてくれないかと頼んだ。
「……分かった」
少女が数多のモニターや機器が鎮座するコントローラーエリアからパネルを操作すると、ウィンと唸りを上げて、ガラスの扉は開かれた。オベロンは勝手知ったるように、マントを閃かせて入っていく。ガラスの扉の中には、大仰な機械が並べられ、3つの棺に様々なコードが繋がれている。その一つに歩み寄り、中を見下ろした。そこに、赤ん坊が静かに眠っている。
3つ並んだ卵型のその棺は――彼と彼女の子供たちの保育器だった。

聖杯による受胎は異様であった。
僅か数か月で、立香の腹は臨月のように大きくなり、ほぼほぼ早産に近い形で赤ん坊は生まれた。
生まれた子は脆弱だった。身体は通常の早生まれといった程度の状態だったが、その魂が酷く曖昧だった。弱く、産声を上げることも無く、昏々と赤ん坊は眠り続けた。生まれ落ちてすぐ、その存在を保証する為、備えとして準備されていた保育器に格納された。最悪を予想していたオベロン達も異なる結果に戸惑ったが、狼狽が酷かったのは母親の立香の方だった。酷く精神が不安定になり、泣き崩れる彼女を慰めることしかできなかった。
奈落の虫であるオベロンには温もりを与える慰めしか出来ず、――そうして二人目を身籠った。まさか、とオベロンと他の医療スタッフは頭を抱えたが、立香は喜んだ。
嬉しそうに膨らむ腹を撫でるさまを見てしまったら、何も言えず。やがて、二人目の子供も無事に生まれた。けれど、その子も一人目と同様に脆弱だった。立香は、ほぼ半狂乱に近い形で保育器から我が子を出そうとした。子供を守ろうとしたのかあまりの激しさに、鎮痛剤をやむを得ず打って引きはがされた。もう二度と彼女にそんなものを打たせないと誓った思いはガラガラと崩れ落ち、――オベロンを責めた。何か解決方法が無いかと来る日も来る日も文献を漁り、現代のデータに目を通し、多くのキャスターと医療スタッフと検討を繰り返してきた。みなの願い虚しく、解決の糸口は掴めなかった。
当たり前だ。聖杯による受胎など、そうそう事例がある訳がなかった。
三人目を生んだ立香は、何もかも諦めたように静かに泣いた。何が彼女をそうさせたのか。妖精眼など無くともオベロンには分かっていた。人理は取り戻され、世界はのうのうと今日という一ページを刻んでいく。カルデアという機関の存在意義は希薄になり、人類最後のマスターという存在は必然性を失っていく。遠からず、このカルデアを去る日が来る。それは、仲間たちとそして、何よりも愛した男との離別を意味していた。一般人の域を出ない立香にハイサーヴァントであるオベロンを維持できる魔力は無く。日常に戻る立香に魔道具など以ての外。彼女の身の上を危うくするだけだ。
だから、別れは必然。オベロンも立香も、その日を瞬きもせず見つめていた。
しかし、運命は誰も想像もしない方向に進む。立香がオベロンの子を身籠った。こんな状態では、彼女を日常に返すことは出来ない。彼女の帰還は有耶無耶になった。浅ましい願いと知りつつ、立香はこの子供に希望を見出していた。だから、その子供の存在が揺るいだ時、彼女は誰よりも動揺したのだ。蠟燭のように消えてしまいそうな希望の火を繋ぎ止めたくて、必死に縋った結果、彼女は三人の子を産んだ。
あまりにも儚いその希望の星、それらは母の腕に抱かれることも無く、この無機質な揺り篭に標本のように閉じ込められている。
「お寝坊さん。どんな夢を見ているんだい?その寝汚いところは誰に似たのかな。俺も彼女も、眠るのは得意だから……」
そっとガラスに額を当てる。
(ただ、きみたちが笑っていてくれたら、――それだけでいいのに)

卵型の棺に寄り添う青年の姿は、美を追求してきたダヴィンチの目にも、これ以上の美しさはないと思える程の光景だった。
誰が思うだろうか――額をガラスに寄せ、祈るように目をつぶる彼が汎人類史を滅ぼしかけた恐るべき災厄だと。
「どうしてなんだろう」
ぽつりと少女の口から零れ落ちた言葉は、アスクレピオスとパラケルススの耳に届く。
「やめることを許さなかった。止まることを許さなかった。消えゆく世界の死を悼むことを許さなかった。選択肢を与えていたようで、私達は、彼女に他の選択肢を許さなかった」
榛色の瞳からひとつひとつと、雫が零れ落ちていく。
「オベロンだけが彼女の何も奪わなかった。与えてくれた。許してくれた。抱きしめてくれた。たった一つ、やっと彼女に返すことが出来るとそう思ったのに。どうして、…こうなっちゃうのかな」
アスクレピオスは長い袖に隠された掌に爪先が食い込むほどの力を込めて罵った。
「神は救わない。ただ、そこにあるだけだ。奔放で残忍で無茶苦茶だ。だからこそ、僕は抗うんだ。死など神々が付け加えた愚かなシステムを覆すために。言わばこれはその前哨戦。ああ、そうとも。絶対に、絶対に神の国になど連れて行かせはしない」
背後の二人と違い、パラケルススは黙す。世界は祝福に満ちている。。不気味に明滅する試験管の中の反応を見ながら、彼はこれまでの検証と考察を振り返る。
彼の中で今最も有力と考えている方法がある。高密度魔力リソースサーヴァントを細かい要素までに砕き、赤子に与えるのだ。愛すべきマスターを悲しませんが為、如何なる手段も手法も問うてはいられない。きっと候補者犠牲者は簡単に見つかるだろう。みな、快く申し出てくれるはずだ。彼の中で、音も無く狂気が進行していく。
――彼らを追い詰めるに十分な月日が流れていた。

ふと、大きな気配(彼女に比べれば殆どのものが大きなものになる)に彼女は気が付いた。ちょっとびっくりしたが、白くてふわふわした気配は自分と同じものだなと分かった。
それにしてもなんだかどんよりとし過ぎてて、不愉快だ。これはよくない気がするなぁと彼女は感じた。昨日まで酷く重たかった瞼は、今日はスムーズに動きそうだ。
よしよしと彼女は、久方ぶりその目を開いた。

「あーう」
突然聞こえた愛らしい声に、オベロンは驚いて閉じていた目を見開いた。視線の先、ガラスの向こうで、二つの星が瞬いていた。あうあうと彼の星がこちらに手を伸ばし、何事かを訴えている。は――と息を止めて、オベロンは彼女を見つめた。不思議そうな表情をした彼女は、次の瞬間、くしゃりと顔を歪ませて、不機嫌さを顔いっぱいに現した。
「ふっ。あはははは!……おはよう、お嬢さんプリンセス。ご機嫌はいかがかな?」
「だう」
不満ですと彼女は表情で、雰囲気で示した。
「随分とご機嫌斜めだな…。お腹がすいたのかな。きみが欲しいものは何か教えてくれないか」
赤ん坊相手に無茶を言うが、この男、妖精眼なるチートスキル持ちである。故に、まー、と他の人が聞けば意味不明な言葉からも正確に彼女の望みを掬い上げた。
「…………ダヴィンチ」
『え、あ、なん。なんだい?』
部屋の音声端末から酷く動揺した声が返ってくる。メインエリアでは、3人が目を見開いてこちらを凝視していた。
そんな彼らに苦笑を返して、オベロンはひとつの依頼をする。
「マスターを、立香を呼んでくれないか」
『……それは、』
大丈夫だとオベロンは言う。その顔には先ほどまでの悲壮さは無く、
「頼む、呼んでくれ。…………この子が、立香を探しているんだ」

マイルームに飛び込んできたマシュと共に立香は白い壁の前に立っていた。
焦がれる気持ちと怖い気持ちがぐちゃぐちゃに混ざり合ったまま、この壁の前に立っている。酷く冷たくなったその手に触れる温もりがある。
横を見れば、マシュが立香と同じように緊張の色に染めながらも不器用に自分のマスターに笑いかけた。
うん、と涙を飲み込んで、立香はキーワードを告げる。
「七つの世界。七つの杯。七人の王」
『入室依頼を認証。氏名をどうぞ』
「藤丸立香」
『氏名と声紋パターンを認証。同行者の氏名をどうぞ』
「マシュ・キリエライトです」
『同行者の氏名と声紋パターンを認証。入室キーワードをどうぞ』
「<星の輝く夜に>」
『キーワードを認証。開錠します』
扉は開かれた。道しるべに従って先に進んでいく。明るい室内に入ると、暗闇に慣れた目が痛んだ。暫く瞼を開閉して、光に慣れさせると――ぼやけた視界の果てに、開かれた中央の扉が目に入った。
「」
そこに、オベロンが立っていた。きらきらと天井から人工的な光が彼に降り注ぎ、まるで舞台の一幕のよう。マシュに背を優しく押されながら、立香は一歩一歩と彼に近づいた。ガラスの扉があったその境目まで来て、限界だったのか、立香は崩れるように座り込んだ。
立香は嗚咽する。もう涙など枯れ果てたと思ったのに。雨のように涙が床に零れ落ちていく。滲んだ視界に見慣れた靴先が入り込んだ。同じように座り込む気配がして、必死に立香は顔を上げた。
「まー」と小さな赤ん坊がオベロンの腕に抱かれ、彼女に手を伸ばしている。銀の薄い髪に、黄金の瞳。どこもかしこもぷくぷくとまろいその肢体。堪らず、縋るように、小さなその命をオベロンの腕ごと抱きしめた。ゆっくりとオベロンの手が離れていく。不慣れ故にぎこちなく腕に抱けば、甘い匂いがした。
「言ったろう? きみのママは泣き虫だって。だから、もう……あんまり心配をかけさせないでおくれ」
「だ」
分かったのか分かっていないのか。そのやりとりが可笑しくて、立香は涙を流しながら笑った。

 

きゃあきゃあと甲高い笑い声を聞きつけて、ひょいと孔明は扉が開かれたままの部屋の中を覗き込んだ。
「こら! 待ちなさい。なんなの? きみのそのハイハイの速さは!」
オベロンが必死に小さな塊を追いかけている。なるほど、彼の言う通りかなりの速さと不規則さだ。父親に似たんだなと、独り言ちて孔明はそのまま扉の横を通り過ぎて行った。
「捕った!」
コーナーに追い詰めて漸くオベロンは、小さな塊――彼の娘を抱き上げた。ご苦労様です、とマシュが紫と黒に配色された揺り篭を揺らしながら労わる。その中には、緋色の髪の女の子がすいよすいよと心地よさげに眠っている。マシュはすっかりこの2番目の赤ん坊に夢中だ。否、どの子も目に入れても痛くないほど可愛がっているが、彼女のマスターと同じ髪色をした次女には特別思い入れがあるようだ。
やれやれと、動き続ける娘を押さえつけながら、オベロンはベットに座る立香の隣に並ぶ。どっこいしょっと腰を下ろして、隣を見れば、暗めの髪に青い瞳をした赤ん坊が必死に立香の胸元に吸い付いている。こくこくと懸命に乳を飲んでいたが、満足したのか、その口元が乳房から離れた。お腹いっぱいになったのか、目がとろんとしている。
「あ、待って待って。ねんねの前にげっぷしようねー。うまく出来るかな? はい、ぽんぽん」
立香が優しく背中を叩くが、中々思うように息を吐きださぬ息子にオベロンはあーと口を開けて見せる。オベロンを見た子は釣られるように口を開けて、けぷと可愛らしい音を吐きだした。無事に吐きだした息にほっと息を吐いて、立香は赤ん坊の口元をガーゼで甲斐甲斐しく拭ってやる。二人揃って、ふーと深呼吸。子育ては大変だ。しかも、3人同時に面倒を見なければいけない。苦労も三倍だ。世のお父さんお母さんにすごい。
オベロンは片手に娘を抱き、もう片方の手で乱れた立香の胸元を整えてやる。
「ありがとう」「どういたしまして」
そこに室内の音声機からダヴィンチの声が響いた。
『立香ちゃーん、オベロンー、マシュもいるかな? 次女ちゃんの健康チェックの準備が整ったよ。医療ルームにきてー』
その声を聞き、立香が立ち上がりかけたが、腕の中の子供に気遣い、中途半端な立ち方になった。その様を見て、さっとマシュが籠の中から赤ん坊を抱き上げる。
「先輩、オベロンさん。この不肖マシュが、娘さんをお連れしてもよいでしょうか!」
「わー、マシュ、助かる~。大丈夫?その子は大人しいからぐずったりしないと思うけど、お願いしてもいいかな」
はいっと満面の笑みを浮かべて、彼女は建てられたゲート(長女逃走防止用)を外して廊下の先に出ていった。
「二人で全員の育児をするのは無理すぎる。ほんと、マシュがいて助かったよ」「癪だけど、同じ意見だよ」
立香がはぁとため息をつきながら、オベロンの肩に寄りかかる。すりと彼女の髪に頬を寄せれば、服の隙間からふっくらとした膨らみが見えた。
「……すっかり俺はお役御免みたいだね」
「なんのこと?」
突然の宣言に、立香が預けていた頭を離してオベロンを見上げる。そんな彼女ににやりと笑みを返して、素早くその胸元にキスを贈る。
ちゅっと音を立てて、彼は意地悪く言った。
「もうお手伝いはいらない?」
かっと立香は全身の温度を上げた。何時ぞやの誘いの言葉を揶揄られたのだ。
「な、な、なに言ってるの! こ、こんな子供たちの前で、馬鹿なの!?」
「こーんなちっちゃい赤ん坊に意味なんて分かるわけないだろ」
ニマニマと笑うオベロンに立香は怒りがこみあげて、そういう問題じゃない!と足で脛を蹴った。
「いたっ。乱暴だなぁ。いいかい、スピカ。きみはそこのママやアルトリアみたいにお転婆になるんじゃないぞ。優雅にお淑やかに――、ね?」
このやろう、と内心で立香は憤慨する。悪かったですね、お淑やかじゃなくて!ぷんぷんと頭から湯気を出しながら、なんとかこの妖精王に一泡吹かせられないかと考える。何時だって立香を手の平で転がしていいようにするのだ。彼女が主導権を握れたのは、あの夜ぐらいで。と、そこまで考えて、考えてはいけないことまで考えた。
余裕無く自分の胸元に縋る彼の頭を優しくなでた夜。愛おしくて愛おしくて。あんなに欲しがってくれて、そんなに欲しいなら今夜でも吝かではないな、等と――。
「ばか」
オベロンがゆっくりと上体を後ろのベットに倒れ伏した。妖精眼を持っているのだから、きみの考えなんて筒抜けなわけで。クリティカルヒットだった。ちらりと倒れたまま彼女の背中を見れば、やってしまったと肩をすぼめている。見える項と耳は真っ赤だ。
今日の夜、マシュに3人の子守を頼もう。とオベロンは決心した。何せ今夜は彼女ので忙しくなるはずなので。
邪な考えをする彼の視界に、ぬっと顔が現れた。彼の愛娘が何をしているのかと彼を覗き込んでいる。ぱちぱちと瞬きをする度に、黄金の瞳は星が煌めくように見えた。
「可愛いなぁ」
オベロンは何の障壁も無く、そう呟いた。本心からの呟きだった。と、でろりと粘着質なものがオベロンの顔を直撃する。
「うわ、よだれよだれ!」
慌てて身を起こして、ベットサイドのティッシュを娘の口元に当てる。ひとしきり拭って、自分の顔も拭った。ねっちょりとしたその感触にうわぁと引いた。
やってくれたなと自分の膝に座る娘を見つめれば、きょとんとした瞳が返ってくる。私何かしましたか?と言わんばかりだ。
その顔が自分の形に似ているのに、表情が母親と全く一緒で。オベロンは堪らず噴き出した。
「きみって……ほんとにっ! あははははは、無理無理。あー、可笑しい!」
笑うオベロンに驚いたのか、その丸い瞳がさらに大きく真ん丸になった。それが更にオベロンの笑いを誘う。やがて、笑い転げるオベロンと一緒になって、彼と彼女の星も笑った。

~FIN~