アイの唄

協奏曲★幕間Ⅱ:反省会

温かな陽気煌めくサンルームにて、4人の人間――失礼、1人の人間と3人の英霊でお茶会が催されている。ジャンヌとそのオルタ、孔明が各々好きな紅茶を飲みつつ、居心地悪そうにするマスターを取り囲んでいた。「それで?あんたはまんまと流された訳ね」うぐ…

協奏曲★九章:妖精王の寵愛

はっはっと乱れた息遣いが夜の静寂に響く。簡素な部屋の中、ベットの上で二人の男女が睦み合う。半分以上脱ぎ落ちた衣類は意味を成さず。ちゅうとオベロンは立香の舌を吸い上げた。擦り合わせていた唇を離し、口の端に溜まった水を舐めとる。寄せていた体を少…

協奏曲★六章:命短し恋せよ―

その日、とある廊下にて彼らは邂逅する。紫電の双眸をしっかりと妖精王に向けて、マシュ・キリエライトは口火を切った。「明日の午後、シミュレーションルームを借用しました。そこで私と闘ってください、妖精王」「君と俺とじゃ、立ち位置が違い過ぎるけど……

協奏曲★五章:お茶会にて

『私ね、オベロンのことが――、好・き・だ・っ・た・の・』「……シュ、マシュ!」ハッと呼び声に視点を交わらせる。対面には、モルガンとハベトロットが心配げにマシュを見つめていた。どうやらかなり長い間、白昼夢スペースアウトしていたようだ。折角の茶…

協奏曲★四章:妖精王の糾弾と失敗

(気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!!!)ガンガンと足音を響かせながら、オベロンは廊下を歩く。ざわりと彼の髪は逆立ち、全身に怒気を張り巡らせている。彼の怒りにつられ、虫たちがさざめく。「ちょっと、――オベロン!」マスターの左手を乱暴に掴ん…

協奏曲★三章:託すもの・託されるもの

「頭おかしいんじゃないの?」開口一番、とんでもない剛速球が来た。常ならば、茶化して有耶無耶にしてしまおうと考えたであろうが、今日は、今回のはダメだ。冷えた目の奥に、青い炎が立ち上っている。(ガチ切れ……)立香は首を竦めながら、恐る恐る視線で…

協奏曲★一章:妖精王の口づけ

「さあ、幕をぶち上げろ! クライマックスだ!」汎人類史の生存を賭けた戦いは、暗い日の射さぬ奈落の最中より始まり、蒼い空に帰った。取るに足りぬ虫一匹を取り残したまま。「いやー、ないわぁ。過労で殺す気か?」ノウムカルデア、汎人類史最後の砦。よた…

協奏曲★幕間Ⅰ:とある探偵の見解

ふむ。なるほど。つまり、自己の在り方に異常を感じる――と。左様、ならばそれが正常真実かと。なんですって? 説明になっていない?やれやれ、中々にどうして、聞き上手な助手のいない状態での説明は骨が折れますな。ミス・キリエライトは・・・ははぁ、残…

協奏曲★二章:小さな恋の終わりと始まり

憧れというには温かすぎた、恋というには熱が足りなかった。愛というには遠すぎた、恋というには畏怖があった。時折、感情がマグマのように吹き溢れる日がある。それは大きな特異点を解決した直後よりも、何でもない日常の後にこそやってくる。当たり前だが、…