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前奏曲★妖精王の稲作

「さあ行け、お前たち!」わーっと虫たちがオベロンの指示に従って、緑鮮やかな田んぼに駆けて行く。満足げにその様を見ながら、オベロンは腕を組んで水田を睥睨した。(おのれ、害虫ども)よくもまあ、この俺が汗水垂らした稲を貪り食ってくれたものだ。虫の…

前奏曲★消えゆく火に

太陽が沈み、昼間の暑さが嘘のように涼やかな風が海から流れてくる。ざあん、ざああんと揺れる波間の向こうの夜を眺めながら、オベロンは即席の椅子の上で蓄積した疲労を回復していた。「あー・・・、だっる」ヤドカリにチキンに、果ては鮫もどきと来たもんだ…

前奏曲★星の海できみとふたり

ピアノとヴァイオリンと、三拍子と七拍子。煌びやかな音楽がフロアに鳴り響いている。おとぎの国の特異点を無事にクリアした後、シンデレラ姫の立っての願いで、一夜限りの舞踏会がこの城で開かれている。いくらかのサーヴァント達もカルデアからこちらに来て…

後奏曲★レポート№5:嵐山、黄泉路を行く

世間は常かくのみとかつ知れど痛き情は忍びかねつも(世の中は常にこうだと知ってはいるが、つらい心を堪えがたいものだ)~万葉集 巻三(四七二)より 詠み人 大伴宿禰家持医師から告げられた言葉をマシュの心は拒否した。「どうしてですか?なんでですか…

後奏曲★レポート№X:(Missing Number)

■藤丸立香の秘密についてアルフォンス・ファーガス・ゴールディングはどうやって彼女の情報を知りえたのか?そもそも、あれほどカルデア陣営が苦心して隠していた彼女の情報が一介の魔術師である彼になぜ漏れたのか?Q)査察団の報告によって?  A)いい…

交響曲★八章:星と歌う子守唄

深い夜に一つの影が立香の傍に立った。「オベロン」黒いマントを纏った彼は、ベットに横たわる立香の髪を優しく梳く。ごめんなさい、と彼女は泣いた。ごめんなさい、ごめんなさい。「……ずっと不安だった」オベロンはそっと彼女の頬に手を当てて、囁く。「調…

交響曲★六章:アイの生まれる日

その日、ジャンヌオルタはこの時間帯にティータイムをしたことを死ぬほど後悔した。出来れば眼前の光景から目を逸らしたままにして置きたかったが、次回作へのネタになるかもしれないと必死で奥歯を噛みしめる。紅茶を持つ手が震え、鮮やかな橙色の水面が波立…