いろいろ(短編)

色々な設定。原作が多めかもです。


  • 君を嫌いになる7つのメソッド

    人理の為に、東奔西走。走れども走れども先は見えない我が道かな。本日もお疲れ様でした!というマシュの元気な送り言葉を背に、立香はマイルームに帰還した。駆動音の後、部屋を見渡せば、ライトが付いている。はて?出掛けしなには消したはずと首を傾げれば…

  • さんぴについて考えた結果

    Mistakes are the portals of discovery. ――失敗は発見への入り口である。とは偉人の言葉であるが、これ・・はただ単純にこの女がどうしようもないほどに馬鹿なんだろうと、オベロンは目の前にいる二人の少女・・・…

  • 君は運命の人

    月光のような柔らかなシルバーに湖面のような瞳。整った容姿は道行く人の視線を一身に浴びていた。やがて、人の視線が煩わしくなったのか、青年は休憩を辞めて歩き出そうとした。「オベロン!」、と彼の名前が呼ばれる。振り返って、見知らぬ少女に、彼は苦々…

  • Will you marry me?

    どうして!?と泣き叫ぶ女に、男はさも当然のように言った。飽きた――と。「うわぁ……最低ですね」たまたまマンションの前でかち合った女性(その時もひと悶着あった)をここ数週間姿を見ないなと思い、聞いたところ、「ああ、飽きたから別れた」と告げられ…

  • 夏のお題三連

    わいわいがやがや。――食堂から廊下まで、カルデア中が騒がしい。アゲハ蝶の如き翅を閃かせて、オベロンは舌打ちする内心をひた隠し、速やかに人々の群れを通り過ぎていく。うっかり翅があたりそうで、第二臨の姿になれば良かったと後悔した。廊下の反対側か…

  • They’re both to blame(どっちもどっちだね)

    さわさわと木葉が擦れる音で藤丸立香の意識は目覚める。前にも後ろにも木、木、木。彼女は、ひとり森の中に立っていた。夕暮れの色。黄色。橙。茶色。優しい、――秋の色。彼女の視界いっぱいに広がるその色彩に、ここが何処であるのかを察する。戦いの果て、…

  • 実装一周年記念(2022年夏イベント)

    「さあさあ、マスターは早く寝な。明日も大変だからな」その鍛え抜かれた肉体を惜しげも無くさらしながら、燕青は疲労の色浮かぶ立香の背を押して、船底の宿泊ルームへと誘う。なんだかこのまま寝るには惜しい気がして、立香が押された背中越しに後ろを振りか…

  • オベロンはよく空を見上げる。――明るい蒼い空ではなく、漆黒の夜空とそこに浮かぶ星を眺めている。ストームボーダーでは空は見えない。だから、レイシフトした先、野営の時などは必ずと言って良いほど、空を静かに見上げている姿を見かけるのだ。今日も魔獣…

  • 奈落の底に降る雨

    外側はカリッと、中は白くふわふわ。バターをひと掬いして、表面に押し付ければ、とろりと溶けた。辺りにコクのある薫りが立ち込める。つうっと指先に温かい液体を感じて、慌てて立香はたっぷりバターを付けたパンに噛り付いた。むしゃり。程よく弾力のあるそ…

  • 透明にさせて

    「はぁっ」ちゅっ、くちゅっ、と異音を響かせながら、立香はオベロンと口づけを交わしている。白む頭の片隅で立香は、止めなきゃと彼の肩を押す。「んっ、もう?」舌が痺れて使い物になれないので、こくこくと立香は必死に首を縦に振る。そろそろ朝のブリーフ…

  • 三題噺(ライトレ)「鳥籠、偽物、愛の言葉」

    雌のカナリアは歌わない。通常、美しく囀るのは雄の方だと言われている。寒い季節になると、カナリアの雄は温もりを求めて一層愛の歌を奏でるのだ。笛の音のような高く美しい声で。「あっ、あっ、あっ」ばさりとオレンジの羽が広がり、小刻みに震えている。そ…

  • 水底の星

    折角の水着が勿体ないと言う立香に手を引かれ、オベロンがホテルのプールに連れ出されたのは人気の途絶えた夜半のこと。「だから、泳げないって言ってるだろうが!」「別に泳がなくもいいじゃない。ほら」スポン――、気の抜ける音と共に立香の素足が夜の風に…

  • 白昼夢、あるいはありもしない未来の一欠片

    リーリーリー。ああ――、虫の音が聞こえる。自分程、虫に所縁のある者もいないだろう。けれど、この虫の音は聞き馴染みが無い。普段、自分の周りをちょろちょろと徘徊する者たちとは異なる声。はて、自分は一体どこにいるのだろう?オベロンが自問した時、も…

  • 星に願いを

    「織姫と彦星って言ってね、地元じゃ有名なお話だったんだ」「……ふーん。元は裁縫の上達を願う行事だったのが、今や欲望に塗れた願い事のごみ処理場ってわけか。ハハハ、気の毒~ぅ」ちっとも気の毒そうに見えないが、オベロンは願掛け対象の二人を慰労した…

  • 飛んで火にいる夏の虫

    わいわいがやがや。――食堂から廊下まで、カルデア中が騒がしい。アゲハ蝶の如き翅を閃かせて、オベロンは舌打ちする内心をひた隠し、速やかに人々の群れを通り過ぎていく。うっかり翅があたりそうで、第二臨の姿になれば良かったと後悔した。廊下の反対側か…

  • 硝子の下で

    彼は、誰かが捨てた物をひとつひとつ拾い上げて、懐に仕舞い込む。そんな人だった。自分の心には澱みも染みも蟠りも、ひとつも無いのだと言った。数え切れないほどの不幸と、嘆きと、怒りが生まれ。そして死んでいくのを余さず見つめ続けた彼は。ブルーの瞳は…

  • ハロー、Samhain(サウィン)!

    ドラキュラ伯爵がワインを片手に持ち、ドラクルなアイドルが壇上に上がるのを引き留めている。その向こうでは、黄金色に輝く棺からどうみても死にそうにないミイラ男が高笑いを上げている。メジェドの布を被ったウサギ耳の幽霊がカボチャのランタンを持って右…

  • 【ゆるっと牧場生活】Cada mochuelo a su olivo(春の月)

    背の高い木々の間、平原とも森とも言えぬ砂利道を一台のバイクが走っていく。その可愛らしい車体とは裏腹に、ブロロロロロ!という重低音。じゃりじゃりと砂を踏みしめるタイヤからは砂埃が上がっている。太陽が空高く昇り、畦道にはバイクの機体と2つの人影…

  • 【ゆるっと牧場生活】Cada mochuelo a su olivo(夏の月)

     ここ最近、日差しが強くなってきた。太陽がギラリと凶悪な光を発するようになり、その光に晒された人々の肌がクリームからチョコレートに、人によってはブラックコーヒーのような色に染まるようになった。 さんさんと太陽の光が注ぐ夏の一日。世の女性が紫…