妖精王と奏でるアイの唄

こちらは支部で掲載していた長編シリーズを纏めております。

協奏曲:オベロンと立香ちゃんがくっつくまで。
交響曲:ED後の二人に訪れたベイビーパニック。
後奏曲:一難去ってまた一難、育児に疲れる二人が世界を駆け巡る。
前奏曲:くっつく道中で起きたあれこれ。
間奏: 協奏曲と交響曲の合間。
狂想曲:二人の子供たちのひと夏のアドベンチャー。春コミで頒布いたしました。
    ※こちらは掲載予定無し


妖精王とひばりの協奏曲

  • 協奏曲★一章:妖精王の口づけ

    「さあ、幕をぶち上げろ! クライマックスだ!」汎人類史の生存を賭けた戦いは、暗い日の射さぬ奈落の最中より始まり、蒼い空に帰った。取るに足りぬ虫一匹を取り残したまま。「いやー、ないわぁ。過労で殺す気か?」ノウムカルデア、汎人類史最後の砦。よた…

  • 協奏曲★幕間Ⅰ:とある探偵の見解

    ふむ。なるほど。つまり、自己の在り方に異常を感じる――と。左様、ならばそれが正常真実かと。なんですって? 説明になっていない?やれやれ、中々にどうして、聞き上手な助手のいない状態での説明は骨が折れますな。ミス・キリエライトは・・・ははぁ、残…

  • 協奏曲★二章:小さな恋の終わりと始まり

    憧れというには温かすぎた、恋というには熱が足りなかった。愛というには遠すぎた、恋というには畏怖があった。時折、感情がマグマのように吹き溢れる日がある。それは大きな特異点を解決した直後よりも、何でもない日常の後にこそやってくる。当たり前だが、…

  • 協奏曲★三章:託すもの・託されるもの

    「頭おかしいんじゃないの?」開口一番、とんでもない剛速球が来た。常ならば、茶化して有耶無耶にしてしまおうと考えたであろうが、今日は、今回のはダメだ。冷えた目の奥に、青い炎が立ち上っている。(ガチ切れ……)立香は首を竦めながら、恐る恐る視線で…

  • 協奏曲★四章:妖精王の糾弾と失敗

    (気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!!!)ガンガンと足音を響かせながら、オベロンは廊下を歩く。ざわりと彼の髪は逆立ち、全身に怒気を張り巡らせている。彼の怒りにつられ、虫たちがさざめく。「ちょっと、――オベロン!」マスターの左手を乱暴に掴ん…

  • 協奏曲★五章:お茶会にて

    『私ね、オベロンのことが――、好・き・だ・っ・た・の・』「……シュ、マシュ!」ハッと呼び声に視点を交わらせる。対面には、モルガンとハベトロットが心配げにマシュを見つめていた。どうやらかなり長い間、白昼夢スペースアウトしていたようだ。折角の茶…

  • 協奏曲★六章:命短し恋せよ―

    その日、とある廊下にて彼らは邂逅する。紫電の双眸をしっかりと妖精王に向けて、マシュ・キリエライトは口火を切った。「明日の午後、シミュレーションルームを借用しました。そこで私と闘ってください、妖精王」「君と俺とじゃ、立ち位置が違い過ぎるけど……

  • 協奏曲★七章:妖精王の恋物語り

    昔々あるところ妖精の国に――「二人とも今日はありがとう。お陰様で予定より早く目標数を達成できたよ。助かる~。休み調整しておくから、暫くゆっくりしてね。」「そなたも良う戦った。見事な采配であったぞ。」「マスターお疲れ。君もゆっくり休むといい。…

  • 協奏曲★八章:閨にて希う人

    『えー! うーん、いや、いいけどね。最近シミュレーションルーム借用依頼が多いからさ。分かってると思うけどもリソースは有限だ。使い終わったら直ぐに退出してね』ダヴィンチちゃんから小言を貰いつつも、無事にシミュレーションルームを借りることが出来…

  • 協奏曲★幕間Ⅱ:反省会

    温かな陽気煌めくサンルームにて、4人の人間――失礼、1人の人間と3人の英霊でお茶会が催されている。ジャンヌとそのオルタ、孔明が各々好きな紅茶を飲みつつ、居心地悪そうにするマスターを取り囲んでいた。「それで?あんたはまんまと流された訳ね」うぐ…

  • 協奏曲★九章:妖精王の寵愛

    はっはっと乱れた息遣いが夜の静寂に響く。簡素な部屋の中、ベットの上で二人の男女が睦み合う。半分以上脱ぎ落ちた衣類は意味を成さず。ちゅうとオベロンは立香の舌を吸い上げた。擦り合わせていた唇を離し、口の端に溜まった水を舐めとる。寄せていた体を少…

妖精王と星々の交響曲

  • 交響曲★一章:その知らせは突然に

    空と天と宙と――異聞帯の果て、7つの空想樹を伐採し、最後の戦いに挑む。苛烈で熾烈な戦いの最中、一条の光が、1人の人間の胸を貫いた。「「「マスター!」」」(糞くそクソ糞くそ!!!)心中で己の油断を最大限に罵りながら、オベロンは倒れ伏した娘の下…

  • 交響曲★二章:君に幸あれ

    頭上に王冠を戴く、金紅の王女エウロペ――。かのお方は前触れも無く、医務室を訪れた。「なんだ。エウロペ殿ではないか。ここは怪我人病人向けの場所だ。用がないなら」「まあ。アスクレピオス。そんな他人行儀な。言ったでしょう? あなたもまた私の孫です…

  • 交響曲★三章:嵐-身内戦線、異常あり-

    古今東西、老若男女、神在りて、鬼在りて、人ぞ在る。ここは歴史家や民俗学者が見ればひっくり返ること間違いなしの、様々な英霊たちが集う場所、カルデア人理継続保証機関。そんな星見の灯台では、嵐が吹き荒れていた――。「ぜっっっっっったい女の子です!…

  • 交響曲★四章:赤いアネモネをきみに/紫のアネモネを貴方に

    一汁三菜。胚芽米ご飯。鮭のホイル焼き。小松菜の煮びたし。卵スープ。どれもこれも妊婦の立香を想って、厨房組が栄養素や彩りその他もろもろを考慮した渾身の献立だ。ご飯もホイル焼きもほかほかと湯気が上がり、野菜の緑も鮮やかだ。スープからはふんわりと…

  • 交響曲★五章:嵐-東より風雲来たりて、海に行く―

    それなりの魔術師の家に生まれた彼は、それなりの人生を歩んできた。今回、カルデアの査察に同行できたのは各名家が牽制をしあった結果のおこぼれに過ぎない。色々な方面からあれやそれやと指示を受けているが、行く先を思えばどれだけの指示をこなせるか。憂…

  • 交響曲★六章:アイの生まれる日

    その日、ジャンヌオルタはこの時間帯にティータイムをしたことを死ぬほど後悔した。出来れば眼前の光景から目を逸らしたままにして置きたかったが、次回作へのネタになるかもしれないと必死で奥歯を噛みしめる。紅茶を持つ手が震え、鮮やかな橙色の水面が波立…

  • 交響曲★七章:妖精王の儘ならないカルデアライフ

    「このクソ虫ーーーーー! あれ程、言ったではないですか! 次は男子と!!!!!」オベロンはモルガンに胸元を掴まれたまま、がっくんがっくんと振り回されていた。あああと嘆く彼女に向けるオベロンの瞳に光は無い。屍のようだ。そんな彼の耳に、聞きたく…

  • 交響曲★八章:星と歌う子守唄

    深い夜に一つの影が立香の傍に立った。「オベロン」黒いマントを纏った彼は、ベットに横たわる立香の髪を優しく梳く。ごめんなさい、と彼女は泣いた。ごめんなさい、ごめんなさい。「……ずっと不安だった」オベロンはそっと彼女の頬に手を当てて、囁く。「調…

妖精王とひばりの後奏曲

  • 後奏曲★レポート№1:魔術師連続失踪事件

    かつりかつりと靴音を響かせて、シルバーの髪の青年―オベロンはくすんだ色の煉瓦で彩られた街並みを歩いていた。ストークオントレント――。イギリスのほぼ中央、やや西部に位置し、ロンドンからも数時間とほど近い。ウェッジウッド、ミントンなど名だたるブ…

  • 後奏曲★レポート№2:波間に沈むエメラルド

    一歩。「ぴ(ダメ)」二歩。「え(NO)」三歩。「んんんんんんん(遺憾の意)」後ろに下げていた足を逆方向にダッシュしたオベロンは、愛娘の魔力が爆発する寸前で彼女を抱き上げた。だめだこりゃとダヴィンチちゃんは肩を竦めた。その横で、はぁーっ、と所…

  • 後奏曲★レポート№3:彼方より来る空中宮殿

    「「「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~~~~!!!」」」」「あっははははは!」怒号と哄笑と――、五人は走った! 遺跡の中を、一心不乱にオベロン達は駆けていく!「イシュタル!! 君、後で覚えていろよっ!!!」「うるさい、うるさい、うる…

  • 後奏曲★レポート№X:(Missing Number)

    ■藤丸立香の秘密についてアルフォンス・ファーガス・ゴールディングはどうやって彼女の情報を知りえたのか?そもそも、あれほどカルデア陣営が苦心して隠していた彼女の情報が一介の魔術師である彼になぜ漏れたのか?Q)査察団の報告によって?  A)いい…

  • 後奏曲★レポート№5:嵐山、黄泉路を行く

    世間は常かくのみとかつ知れど痛き情は忍びかねつも(世の中は常にこうだと知ってはいるが、つらい心を堪えがたいものだ)~万葉集 巻三(四七二)より 詠み人 大伴宿禰家持医師から告げられた言葉をマシュの心は拒否した。「どうしてですか?なんでですか…

  • 後奏曲★レポート№6:ブリテンにて、策士策に溺れる 

    穏やかな昼下がり。うららかな陽気に包まれて、アルフォンスはとても、大変、とんでもなく、エトセトラ、そう――困惑していた。「わっ、この紅茶とても美味しいです!」「……インドに直契約をしている農場がございます。そちらから、ファーストフラッシュが…

  • 後奏曲★卵ころころ?

    オベロンには人に言えない願いがあった。――え? 妖精国? そんなものは、もうとっくの昔だ。昔々あるところに、なんて前置きがつくぐらいの気持ちだ。(実際はそんなに前じゃないけどね)所謂、『あの時は若かったな~』ってやつだ。そう。これは今の・・…

妖精王とひばりの前奏曲

  • 前奏曲★消えゆく火に

    太陽が沈み、昼間の暑さが嘘のように涼やかな風が海から流れてくる。ざあん、ざああんと揺れる波間の向こうの夜を眺めながら、オベロンは即席の椅子の上で蓄積した疲労を回復していた。「あー・・・、だっる」ヤドカリにチキンに、果ては鮫もどきと来たもんだ…

  • 前奏曲★星の海できみとふたり

    ピアノとヴァイオリンと、三拍子と七拍子。煌びやかな音楽がフロアに鳴り響いている。おとぎの国の特異点を無事にクリアした後、シンデレラ姫の立っての願いで、一夜限りの舞踏会がこの城で開かれている。いくらかのサーヴァント達もカルデアからこちらに来て…

  • 前奏曲★妖精王の稲作

    「さあ行け、お前たち!」わーっと虫たちがオベロンの指示に従って、緑鮮やかな田んぼに駆けて行く。満足げにその様を見ながら、オベロンは腕を組んで水田を睥睨した。(おのれ、害虫ども)よくもまあ、この俺が汗水垂らした稲を貪り食ってくれたものだ。虫の…

  • 前奏曲★何時か見る夢

    「ニンゲン! よくやったな!」「お竜さん」白い竜の乙女がぎゅうぎゅうと立香を抱きしめる。様々な過去の遺恨を乗り越えて、無事にこの特異点を解決出来た。これもまた一つの歴史。その終わりに見た志士の覚悟と運命への抗いを決して忘れることは無いだろう…

妖精王とひばりの間奏

  • 間奏★魅惑のジョーゼット

    ふっとオベロンは意識を浮上させる。本来サーヴァントに眠りは不要であるが、自分を打ち滅ぼした汎人類史に図らずも召喚されて以降、かつてのやる気がすっかり消えうせて、有事の際以降は惰眠を貪る癖がついてしまった。重たい頭を緩く振って、ぼうっと周囲を…

  • 間奏★Mirror Mirror 君の言葉を聞かせて

    「やられた」暗い廊下に立香の悔し気な声が落ち、オベロンからは舌打ちが響く。オベロンと立香は、古城の廊下で孤立していた。発見した特異点にレイシフトし、現地調査を行った。いつものルーティンだが捜査は足で稼ぐもの。村々の情報より、この古城に原因が…

妖精王と星々の狂想曲

※2023年の春コミで頒布させて頂きました。こちらはWEBで公開予定無しです。
(特殊文字を使っているのですが、Webでその書式が使えずネタバレになってしまう為💦)
 少数ですが、BOOTH販売ページに在庫がありますので、ご興味がありましたらどうぞ。

https://3681796.booth.pm/items/4639797